4年ぶりにポエトリーリーディングオープンマイク「SPIRIT」へ出向いたって話(エッセイ)

出演情報

7月7日深夜0時17分。急いでシャワーを浴びて一息つく間もなく即座にマックを広げて文章を打ち続けている。今日は職場の検品作業で右手を酷使し、手の甲の付け根がジンジン痛むって言うのに、何故こんな夜遅くにまた負荷をかけているのだろうか。まあしょうがない、これが自身特有の「衝動性」と言うものなのだから。今記しておかないと気が済まない性分という名のスイッチがたった今発動してしまったのだから。今回も確実に長くなるので心してお読み下さい。

道玄坂を駆け上り、途中にある普段なら気にも留めずに通り過ぎてしまうであろう小さな角を右に曲がり、二股に分かれた道に差し掛かる。左側の急激な坂道を目の前にして思わず立ち止まる。かつて頻繁に意気揚々と突き進んでいたこの坂道も、久々に目の前へ立ちはだかると異様な緊張感を醸し出してくる。一瞬の葛藤の後、あの頃と同様に勢いよく歩き出した。数秒後、目の前には懐かしい階段が立ちはだかっていた。

私は今日、約4年ぶりに「ポエトリーリーディング オープンマイクSPIRIT」へ参加するため、渋谷のRUBY ROOMへと足を運んだ。

事の発端は佐藤yuupopicさん(以下:ゆぽさん)からのLINEであった。「7/6に行われる『SPIRIT』のゲストライブにソロで出演するので、是非とも見届けに来て欲しい」とお誘いが来たのである。私は悩んだ。大いに悩んだ。というのも私は様々な事情が重なり、2022年の7月を最後に約4年間「SPIRIT」から足が遠のいていた。否、「行こうにも行ける状況ではなかった」とでも言おうか(一応断っておくが、「SPIRIT」という場所自体に問題がある訳ではない。あくまで私の個人的な問題が複雑に絡み合って自分の立場がややこしくなってしまったのが原因)。そのため、お誘いを受けた直後はかなり消極的であり、やや行かない方向に傾いていた。しかし、6/8に開催された桑原滝弥さん主催のオープンマイクイベント「タマトギ」でゆぽさんとお会いした際に次のような事を言われ、気持ちに変化が生じた。

「ー もう一度、あの頃のSPIRITのメンバーと楽しみたい」

今現在の「SPIRIT」の現状については、私がとやかく言える立場ではないのでここでは記さない。しかし、この4年間で私以外にも様々な事情で足が遠のいてしまった方が複数名いらっしゃるのは風の噂で聞いていた。このゆぽさんからの一言で、私も「あの頃」のSPIRITの空気をもう一度味わいたくなった。そして何より、これまでの活動で度々お世話になったゆぽさんへ恩返しもしたいと思い、私は4年ぶりに「SPIRIT」へ参加する決意を固めたのである。

私が初めて「SPIRIT」に訪れた日は2020年11月2日にまで遡る。そう、コロナ禍真っ只中の時であった。参加した理由は同時期に大学時代からの友人・公社流体力学が時折同イベントに足を運んでいる事を知り、興味を抱いたからである。その時にゲストライブを務めていたのは廣川ちあきさんであり、溌剌としたパフォーマンスと洗練されたテキストに衝撃を受けた事を覚えている。

2回目に訪れた際にゲストライブを務めていたのは斉藤木馬さん。確かこの時が初対面だったと記憶している。私の記憶が定かであれば、この日の木馬さんはなんと30分間暗誦で挑んでいた。「とんでもない芸当をする人だなぁ」と終始感嘆しながら見入っていた。オープンマイク出番直後、私に対して「素晴らしいパフォーマンスでしたよ」と優しく微笑みながら声をかけて下さった事を今でもハッキリと覚えている。本当に嬉しかった。この時は約3年後、アーティストとエンジニアの関係で共にアルバムを作成する間柄になろうとは夢にも思っていなかった。人生って面白い。

その後、私はほぼ毎月欠かさず「SPIRIT」へと足を運んだ。参加した当初は名前もまだ「おに熊」であり、やがて苗字の読みはそのままで漢字だけ変えた「遥多大智」または「遥多」名義に変更して参加するようになった。多嘉喜さん、木村沙耶香さん、もりさん、もるたさん(当時は「もるたパン」名義)、服部剛さん、どぶねずみ男。さん…など、「SPIRIT」を経由して繋がった詩人の数は計り知れない。そして様々なカルチャーが密集する「渋谷」という街のど真ん中で毎月5分間詩を朗読できるひと時は何事にも変え難い高揚に満ちていた。あの頃の私の生活上において、「SPIRIT」は最早欠かせないものと化していた。

最後に「SPIRIT」へ足を運んだのは2022年7月4日。この時の私は今後計画していた様々な催しに対して並々ならぬ思いを馳せており、希望に満ち溢れながら参加していた。

ー しかし、この日から1ヶ月も経過していないとある日、私は希望から絶望の淵へと突き落とされる出来事に巻き込まれ、「SPIRIT」への参加もできなくなってしまった ー

階段を駆け上り、若干重たい1枚目の厚い扉を力強く開け、すかさず2枚目の扉も勢いよく開ける。目の前には三代目SPIRIT主催の一人・坂本樹さんが座りながら待ち構えていた。久々に来場した私に対して少々驚きながらも、手の甲にスタンプを押し、ドリンクチケットを2枚渡してくる。チケットを2枚渡してくるシステムも久々すぎて忘れてしまっていた。中に入って辺りを見回すと、思わず次の言葉が口から漏れ出していた。

「あの頃のSPIRITだぁ…」

約6年前に参加し始めた頃に出会い、切磋琢磨し合った詩人たちが一同に会していた。そのせいもあってか、最後に参加した日から4年もの月日が経過していたのにもかかわらず、そんな気が全く起きなかった。何なら「先月も参加していたのでは?」と錯覚すら起きてしまう程だった。柵とか立場とか、そんな面倒臭いものを気にせず、感情の赴くままに詩を楽しく吸収していたあの頃が一気に甦ってきたのである。また、これだけの方を呼ぶ事ができたゆぽさんの人徳にも改めて感嘆した次第である。

佐藤yuupopicさんのゲストライブは終始煌めきと切なさに満ち溢れていて、幻想的なショートフィルムを見ているような美しさがあった。特に印象に残った演目は「サマタイム。〜ぜんぶ、夏のせい!〜」。6月24日にhighball-girl名義でリリースされたアルバム「kikoeru」にも収録されている1曲であるが、色褪せない青春の輝きが濃縮された甘酸っぱい内容となっていて、そんな青春なんて経験した事も無い癖に思わず聴きながらノスタルジックに浸されてしまった。そして客演で参加している夏野氷さんも大変良い味を出しているので是非沢山の方に聞いて貰いたい。

ゲストライブが終わり、いよいよオープンマイクがスタート。「SPIRIT」に参加し始めた頃の高揚が再び押し寄せる。私が参加し始めた頃からの知り合いの方もいれば、初めて見る顔ぶれの方もいらっしゃって、多種多様のパフォーマンスをじっくり堪能する事ができた。改めて「オープンマイクの醍醐味」を実感する事ができた1日であった。パフォーマンスは5分以内で、5分を過ぎると警告としてミラーボールが点灯する。その流れを見ただけで細やかな感動を覚えている自分がいた(ベロンベロンに酔っ払った服部剛さんが自身の出番の際に5分を過ぎても尚喋り続け、その結果近くにいたラビットファイターさんに取り押さえられていたのはこの日一番笑った出来事だった)。

写真提供:ゑん桜OKABEさん

さて、そんな私はどんなパフォーマンスをしたかというと、先日の桑原滝弥さん主催のオープンマイク「タマトギ」で披露したものの大幅にタイムオーバーして桑原さんから大目玉を喰らった問題作「タマトギ」をリベンジも兼ねて披露させて貰った。今回は前回の反省をしっかり踏まえ、間を殆ど作らずにスピーディーに読んだ事が功を奏し、しっかりと時間内に収めて朗読する事が出来た。最後は「また4年後」と半ばギャグっぽく叫んで舞台を降りたが、直後にラビットファイターさんから「駄目だよ、君は一番4年後死んでそうなんだから」と声をかけられ、思わず苦笑してしまった(でも何だかとても嬉しかった)。

そしてこの日はとある奇跡にも遭遇した。なんと、私が「SPIRIT」へ頻繁に通っていた同時期によく共演していたYoshiki Fujioさんと再会する事が出来たのだ。私もYoshikiさんも互いが本日「SPIRIT」へ参加する事など勿論知る由もなく、実に「SPIRIT」上では4年ぶりの再会であった(その間に私が主催する大会「果詩合」に参加して頂いたり、一緒に呑みに行った事などもあったが、「SPIRIT」を通じてお会いするのは4年ぶり、なおYoshikiさんも私と同じく「SPIRIT」へは4年ぶりの参加だったとの事)。不思議な事もあるものだと思ったが、冷静になってこの日を振り返ってみると起こるべくして起きた奇跡なのかもなぁとしみじみ感じていた。これもお誘いしてくれたゆぽさんのおかげである。本当にありがとうございました。

「SPIRIT」へ4年ぶりに参加するまでのこの4年間、本当に、本当に色々な事があった。詩集を3冊も発表し、EPとアルバムを1枚ずつリリースし、「果詩合」を3年も開催し続け、ワンマンライブも刊行し、ポエトリースラムにも1度だけだが優勝した。その間に沢山の人と知り合い、沢山の人と切磋琢磨し、沢山の人と軋轢が生まれた(勿論それは自分が原因の場合もあるので何とも言えないが)。ポエトリーをやらなければ味わう事のない苦しみもあったが、反対にポエトリーをしていなければこの先の人生で絶対に関わる事の出来なかった人たちと知り合える事が出来たのも事実である。では、その起源は何だったのかと問われると、このポエトリーリーディングオープンマイク「SPIRIT」だったと言う他無い。自分の「ポエトリー」の本格的な活動は間違いなく「SPIRIT」から始まった(それ以前にも「無人島オープンマイク」など参加していた場所はあったが)。ここに至るまで4年の歳月がかかってしまったが、改めてお礼を述べさせて頂く。

ありがとう、SPIRIT。今後も詩人のために末永く盛況し続ける催しとなる事を祈ります。

そして場を守り続けている、現主催の坂本樹さんと樋口三四郎さんへ最大限のRESPECTを捧げます。

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