2026年8月8日、江古田・フライングティーポットにてZAREXさんとのツーマンライブ「戯れ蠢く大地」を開催しました。互いの熱気と魂の叫びが激しく混ざり合った、非常に濃厚且つ攻撃的なライブをお届けする事ができました。今回はZAREXさんとの初めての出会いから現在に至るまでに起きたエピソードを交えつつ、ライブの感想をお届けしていきます。
ZAREXさんとの出会い。
ZAREXさんとは、2024年8月24日に京都のPUB VOXhallにて開催された「ポエトリー・ナイトフライト」へ参加した際に初めて出会いました。私自身、この日が人生初の京都上陸であり、且つ「ポエトリー・ナイトフライト」も初参戦で非常に楽しみにしておりました。ところが行きの新幹線の車内で私は耳を疑うニュースを目にしてしまいました。それは同イベントの主催者であるchoriさんが病気で急逝されたという内容。「まさか、よりによってこのタイミングで…」と私は絶句しました。choriさんに関しては東京ではチラホラ名前を聞いており、YouTubeでもパフォーマンス動画を何度か拝見させて頂いた事はあったのですが、実際に直接お話をした事はなかったので、今回非常にお会いするのを楽しみにしていた矢先の出来事でした。
会場に到着すると、急遽代役で主催を務めていらっしゃった方に出迎えられ、緊張と困惑の感情が入り混じる中、本番まで待機する事に。choriさんが亡くなったと聞きつけ、本日来る予定は無かったものの急遽駆けつけた方もいたようで、その中に川原寝太郎さんや三刀月ユキさんの姿もありました。そして、その中にZAREXさんもいらっしゃったという訳です。
そしてイベントが始まり、表向きは皆様気丈に振る舞ってはいるのですが、やはり「人の死」というものはその状況を一変させてしまう力が十二分にある訳でして、今日初めて参加した自分でも察知できるくらい、しめやかな空気も若干流れておりました。前回チャンピオンのゲストライブ後、いよいよ今月のポエトリー・スラムに移るのですが、やはりここでも「真剣勝負」というより「追悼」の空気が漂っており、湿っぽい空気が会場に漂っておりました。かくして自身もこのような空気に飲まれそうになっていた時、私の一つ前の順番であったZAREXさんの出番となりました。ZAREXさんは今までの出場者が醸し出していたしめやかな空気とは打って変わって、眼光鋭く真剣に勝負の世界へと向き合う姿勢を全身から滲み出しておりました(元々ZAREXさん自身「馴れ合いや生温い空気で行うイベントは好きじゃないというスタンスであり、その反骨心から出たものだと仰っておりました)。そしてステージ上のZAREXさんによる全身全霊の咆哮を真近で聴いていく内に、私も段々と「勝負」へのスイッチが入るのを実感しました。そして、元々読む予定だった作品を今一度見直し、ふと「今日読むのはこれじゃないな」と直感で思い、直前で急遽披露する作品を変更するという決断を下しました。
しめやかな空気に流されず自身の姿勢を貫いたZAREXさんに感化された私も全身全霊で朗読しました。その結果、初出場ながら見事準優勝に輝きました(なお、ZAREXさんは3位だったので少々複雑な感情も芽生えましたが)。しかし、この準優勝は直前でZAREXさんのパフォーマンスに感化されたからこそ成し遂げたものであると今でも思っており、本当に感謝しかありません。イベント後、2人で一緒に写真も撮影し、互いを労いました。ZAREXさんはツーマンライブ時にこの事を振り返り「自分がそこでパフォーマンスをした時に初めてHARUTAさんが僕を意識してくれた瞬間というか、漸くここで解放したというか、あの時僕はツーマンが約束されたかなと僕は思ってます」と仰ってくれており、私も強く感じました。それだけ本当に印象的な出来事でございました。

イベント終了後、ZAREXさんと初めてのツーショット。
※なお、ツーマンライブ時には上記の内容を「朗読」風にアレンジしたものを披露させて頂きました。
「ラップが好きと言ってもいいですか」〜「拝啓、TSUTAYA様。」
元のポストが現存しないので、どういう内容だったのか忘れてしまったのですが、私が現状の活動状況を憂うポストをした所、ZAREXさんから以下のリプを頂いた事がありました。
この曲を聴いた直後、私は高校時代友達や恋人もおらず、つまらない日々を送ってきた中で唯一の楽しみであった「放課後にTSUTAYAへ入り浸る」時期を目まぐるしく回想しました。そして、すぐさまZAREXさんへ「実は私も『拝啓、TSUTAYA様。』という、この曲と似通った内容の詩を書いた事があります。」とリプを送りました。その内容のZAREXさんからの返答が以下のポストでした。
このリプを頂いた瞬間、自分がそれまで歩いてきた漆黒の道のりに一筋の光が差し込んできたような感覚を味わいました。それだけ本当に救われたような気がしたのです。
ポエトリースラム「Read in Hell」へ共に出場。

2025年9月23日、ラッパーの空廻さんが企画する「Otona Rap Lab.」が主催するイベント内で行われたポエトリースラム「Read in Hell」に出場しました。私の他にも渡部裕さんや大峠未夜さん、和知田雅くん、ShaLonくんなど錚々たるメンツが参戦すると聞いてワクワクしながら現地入りしました。すると、そこにはなんと事前の出場予定者のリストには名前が掲載されていなかったZAREXさんの姿があり、大変驚きました。聞けばZAREXさん側から「自分の出場に関しては当日までシークレットにして欲しい」と要望していたとの事です。
スラムでは当時の自信作を披露したのですが、会場のリアクションは芳しくなく2票しか入らず大敗してしまいました。しかし、終了後にZAREXさんが私へ票を入れてくださった事を聞き、それだけでも出場して良かったと思いました。そして見事優勝を果たしたのは何を隠そうそのZAREXさんでございました。ZAREXさんは本番当日まで綿密に作戦を練ってから挑んだとの事で、その熱心な姿勢には舌を巻きました。またその日の決勝にて披露した「親友」をテーマにした内容の詩に凄く喰らってしまいまして…。詳細な内容はここでは省きますが、本当機会があれば現場で生で聴いて頂きたいです。見た瞬間、お世辞でも何でもなく「ああ、これは優勝だな」と感じました。このスラムへの直向きな姿勢に対しては、以降の活動の取り組みに多大な影響を受ける事となりました。

ZAREXさん、空廻さんとのスリーショット。
このスラムが終了してから数週間後にZAREXさんと東京で食事をする機会があったのですが、そこで先述のスラムへの向き合い方や私のパフォーマンスや作品へのアドバイスなどを事細かに説明して下さりました。いずれも目から鱗の内容であり、大変貴重な時間を過ごす事ができました。更に年末にはなんとM-1グランプリを私の家で共に鑑賞する程、親睦を深めていきました。そして今年の6月にはなんと「ハルタダイチ論」もnoteに書いて下さってね、本当嬉しかったです。


M-1グランプリ鑑賞後の2人。何か言いたげ。
そして、「戯れ蠢く大地」へ。
嗜好や境遇に作風、ステージへの向き合い方など、様々な部分で強烈なシンパシーを感じた私は自然とZAREXさんと一緒にライブがしたい!と思うようになりました。そして昨年末にお会いした際に「来年、自分の誕生日に一緒にライブをやりませんか?」とお尋ねした所、ZAREXさんも快く引き受けて下さりました。ただし、当初は私の誕生日である5/30に開催予定だったのですが、ZAREXさん側の仕事の都合で開催できず8/8に延期となりました(5/30は代替で斉藤木馬さんとツーマンライブを行いました)。

ZAREXさんはこのライブに向けて「ZAREXエピソード0から1をやろうと思っている」「この日専用セットリストであり、この日を境にパフォーマンスを変えていこうと思っていた」と強く意気込んでおられました。そして当日は攻撃的な側面もありながら、これまで歩んできた人生で抱えてきた感傷をこれでもかと曝け出した、非常に重厚且つ濃厚なライブを繰り広げてくれました。見るもの全てを圧倒させる覇気に満ちたパフォーマンスは文字通り「他の追随を許さない」勢いでした。セットリストもこれまで私と出会ってきた場で披露した曲目や、(恐らく)私の好みや作風に合わせた曲目で構成されており、「このツーマンに真剣に向き合っている姿勢」がひしひしと伝わってきました。冒頭では先ほど紹介した曲である「ラップが好きと言ってもいいですか」と詩の「親友」をモチーフにした長いリーディングを披露してくれましたが、聞きながら「ラップを好きになってしまったワルでもアウトローでもないガキの頃の自分自身」を鮮明に思い返し、胸が抉られる思いでした。あの頃、自分も「ラップが好きになってもいいですか」と何度唱えた事か。まだ金が無くて都内へ行く余裕もなく、頻繁に最寄駅にあるいくつものBOOK OFFを梯子してM.O.S.A.D.やSEEDAやマッケンジーやキエるマキュウのアルバムを見つけて喜んでいた青臭い自分へこの衝撃を教えてあげたくなった。ネタバレになるので詳細は防ぎますが、ZAREXさんと同じ類である自分自身にもくっついて離れないこの「親友」ってやつには何度も泣かされてきました。しかし、この「親友」のおかげでZAREXさんもライブで仰っていたように「黒い表現を愛する事ができた」し、それを作風として昇華する事もできたし、何よりこうして世代も境遇も生き方も違ったZAREXさんと出会い、親睦を深め、共にツーマンライブまで行う事もできました。非常に厄介な存在ではあるが、考えて活用すれば「縁」に繋がる動力源にもなり得る、それは今後も続いていくのでしょう。大変な皮肉ですが。
その後も針でグサグサと突き刺すような、心根へ強く訴えかけてくる内容の曲に揺さぶられました。亡くなった方に対して「こんな事なら、あの子の話を聴いておけば良かった」と軽々しく言い放つ大衆への怒りを示した曲、不可思議/wonderboy.の「生きる」のトラックに合わせた曲、ラッパーのGOMESSさん主催で行われたマイクリレー曲に参加した際の一節、韻を重視した文字通り「ラップ」に徹した曲…根幹のスタイルは維持しながらもそれぞれ違う表情を見せるZAREXさんの引き出しの多さに感嘆しました。また、合間のトークもかなり流暢で羨ましく思いました。
そして終盤に披露した「影縫」という曲は「潜在的なもう一人の自分」=「影」をテーマにした内容であり、YouTubeにもUPされているので是非聴いてみて欲しいです。ネガティヴなイメージのある「影」と対峙しながらも自己表現へと昇華していくという、ZAREXさんの真骨頂とも言える内容に仕上がっております。原曲はマイクリレーものなのですが、幾多のラッパーに囲まれながらもしっかりと存在感を発揮されているあたり流石でした。
そしてZAREXさんパートのライブの最後ではオントラックでコラボ曲を披露致しました。その曲のタイトルはズバリ…「駄サイクル」!!! このタイトルもといテーマはZAREXさん側から提案して下さったのですが、元ネタは石黒正数氏の漫画作品「ネムルバカ」の一コマにて登場した造語であり「ぐるぐる回り続けるだけで一歩も前進しない駄目なサイクルのこと」という意味で紹介されています。更に漫画内では
「輪の中で需要と供給が成立しちゃってる」
「自称ア〜チストが何人か集まってそいつら同士で『見る→ホメる→作る→ホメられる→見る…』を繰り返している」
「それはそれで自己顕示欲を満たすための完成された空間」
…などと辛辣かつ正直すぎる説明が飛び交っております。
ここまで読まれてだいぶ「察した」方もいるかと思いますが、ズバリ「界隈」へのアンチテーゼ・ソングですね、はい。このツーマンをやる前においても現在においても、ZAREXさんと私は「界隈」について色々と思う所が多々ありまして。そんなフラストレーションを一気に吐き出したマグマのような楽曲となっております。まあ、この曲に関してはここで詳細を説明するのも野暮なので、ただ素直に聴いて貰いたいですね。動画を貼り付けておきますので心してお聴きください。なお、一部自主規制部分があり無音となっておりますのでご了承下さい(理由は聞かないで)。
そしてZAREXさんのライブ後、とうとう私の出番となるのですが、私は今回結構長尺のものを連続で行うという、今までに無い試みを披露していきました。まずはこの記事の冒頭でも書いたよZAREXさんと初めて出会ったイベントについての事とそのイベント内で読んだ自作詩を織り交ぜた長尺の朗読を披露した後、自身のアルバムに収録されている楽曲やつげ義春さんの作品をモチーフにした楽曲、更には自身の曲を膨らませて作成した物語とその曲を融合したものを披露するという今まで余り行ってこなかった試みをしていきました。ZAREXさんとの出会いに触れながらも自身の色を打ち出していくという思いで挑みましたが、なんと40分で収める所を約50分ほどやってしまうという失態をしでかしました。…もうね、前回のタマトギであれだけタイムオーバーには注意しろと自省した筈なのにまた同じ事をやらかすとはね、本当情けないし反省します。すみませんでした。それでもライブ自体は皆様楽しんで頂けたようで、終了後には沢山の労いの言葉を頂きました。特に来場して頂いた春江澪さんからは「自ら作り出した0に首を突っ込みたくなる時もある」という詩の一部分を褒めて頂いた時は嬉しかったです。あと全体的にお客さんから「声がよく通るね」と言われた事も嬉しかったです。

そして私のパートにおいては、ZAREXさんとアカペラで詩の朗読のコラボを行いました。このテーマ決めの担当は私だったのですが、悩みに悩んだ挙句「ポエトリースラム」を選択しました。ご存じの通り私は2023年から自作詩の朗読で競い合う大会「果詩合」を主催しているのですが、その「果詩合」を「ポエトリースラム」と名乗る事を原則控えておりました。その理由は色々ありますが、言える範囲で代表的な理由を挙げるとするならば、世界共通で行われている「ポエトリースラム」のルールや意義とは極端に反しているから…とかですかね(あくまで言える範囲)。それでも有難い事に今まで出場して下さった方の殆どは果詩合を「スラム」と認識してくれたりしていて、複雑な感情を抱いておりました。思えばその複雑な感情に対して区切りをつけたくてこのテーマを選択したのかもしれません。このコラボも動画に残しているので、ここで色々と説明するも野暮なのでどうかその動画をご覧になって欲しいです。言いたい事はそこで全て吐き出しているので、それを聴いて何かを感じ取って頂きたく思います。そして相変わらずZAREXさんのパートは殺気が凄まじく見応えがあります!
出会い、そして縁に感謝。
京都と東京という物理的な距離がある中、2年にも満たない期間でここまで親睦を深めてツーマンライブを行う仲にまで発展するというのは、そう人生において中々ある事ではございません。それもZAREXさんが私のパフォーマンスにかける熱心な思いや直向きな姿勢をしっかりと汲んで下さったからに違いありません。世の中、富や名誉や権力を駆使すれば大抵の事は叶うのかもしれませんが、それらに頼ってもどうにも叶わず得られない事があるのが人との「縁」や「義理人情」であると思います。今回のツーマンライブはそういった「縁」の力を大変強固に感じた、最高の一日となりました。改めて私の強い気持ちに応えてツーマンの相手をして下さったZAREXさんには心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。お盆の忙しい時期にご来場して下さった皆様にも心より感謝申し上げます。


急遽、ZAREXさんのバックDJを務めて下さったtetsuさん
(※本来ならお客さんとしてのみ来る予定でした。お疲れ様でした!)
今後のイベント告知
そして9月にZAREXさんは京都で以下の大きなイベントを2つ主催する予定です。


いずれも出演者が大変豪華であり、確実に見応えのあるイベントになる事間違いなしの内容となっております。特に9/20に開催される「ALIVE」は錚々たるラッパーの方々が一堂に会するので本当に目が離せない一日となるでしょう。もしシルバーウィークに京都へ行く予定を立てている方はこれらのイベントへ足を運んでみてはいかがでしょうか(「ALIVE」は配信でも視聴可能なので、現場へ行けない方はそちらを検討してみて下さい)。
そして私からは言わずもがな、9/27にNakano Space Qにて「果詩合其の七」が開催される予定なので皆様是非とも御検討宜しくお願いします。

更に現時点ではまだ言えないのですが、12月に途轍もなく見応えのある素敵なイベントを開催する予定ですので、楽しみに待っていて下さい…。


