2026年9月27日、「果詩合其の七」、無事終了しました。
途中で主催が一人降板したり、声明文を発表する羽目になったり、喉を痛めて死にかけたり、まあ色々とありましたが、何とかそれらの修羅場を潜り抜けて無事に本番を迎える事が出来ました。

今大会から会場が江古田の兎亭から中野のスペースQへと変更となり、更に開催頻度が年一回となった事で思い切って賞金も¥30,000から¥50,000へと増額しました。このように前大会までと比べると変更点が沢山あり、期待と同じくらい不安があった事も事実です。結果的にイベント自体は盛会となり皆様に満足頂けたのですが、それ以外の部分で改善すべき点が幾つか見られたので、そこは次回開催までの課題とします(詳細は後述)。それでも盛会に終わった事により、準備の段階から最後まで妥協せずに全力で駆け抜けて本当に良かったと心底思いました。
今回も約3日程で出場枠がフルエントリーとなりました。また観覧についても過去最多となる20名近くの方がご来場されました。昔から「継続は力なり」とはよく言いますが、文字通りここまで「継続」してこなければこのような結果は結びつかなかった訳です。最初の一度きりで終わる筈だったこの大会がよくここまで続いたなと自分でも感心しております。勿論私一人の力だけではなく、今まで関わってきた全ての方々のおかげに他なりませんが。
当日の様子を自分なりに総括しますと、まず出場者一人ひとりのステージや朗読への向き合い方のレベルが格段に跳ね上がっていた事が挙げられます。これも「果詩合がどのような大会なのか」という事がこれまでの積み重ねで順調に浸透しており、それを出場者の方々がしっかりと受け止めて下さっているからに他ならないと思いました。それだけ「果詩合」という大会が良い方向に進んでいっているのだなと実感しました。以下、個人的にかなり印象に残った方々を挙げさせて頂きます。

まずは差異等たかひ子さん。1回戦のパフォーマンスを拝見して「物書きで飯を食っている人の覚悟」をひしひしと感じ、1回戦が全て終了した段階では優勝に一番近いのではと強く思っていました。そのような覚悟がしっかりとお客様に伝わり、それが会場賞受賞に繋がったのだと思います。おめでとうございました。

次に川島むーさん。テクニカルな言葉遊びを交えつつも、現代日本が抱えている重い社会問題へ切り込むそのスタイルは決して押し付けがましくなく、3分とは言わずずっと聞いていたいと思えるクオリティでした。結果は惜しくも準優勝でしたが、優勝してもおかしくない程のクオリティを最後まで保っておりました。
次に大井悠平さん。残念ながら1回戦で敗退となってしまいましたが、私は大井さんの朗読の仕方と詩の親和性が非常に好みでして、見る度にほのぼのとしながらもどこかシニカルな視点も含まれている世界観に感嘆してしまうのです。
次に青春カフェさくらいさん。お笑い芸人やミュージシャンとしての顔も持つ多才な方ですが、ポエトリーにおけるスタイルは唯一無二の魅力及び破壊力があり、今回はその魅力が最大限に発揮されていたと感じました。まさに「悲劇と喜劇は紙一重」という世界線を地で行っていて本当に見応えがありました。
次によだかさん。普段ラッパーとしてライブを行うスタイルとは異なる淡々とした語り口にヤラれてしまいましたね。また勝ち上がる度に尻上がりに良くなっていくのがわかり、準決勝で結果が出るまでは決勝に行くのではと思いたくなる程でした。ご自身のnoteで今大会にて読んだテキストが掲載されているので是非とも読んでみて欲しいです。
次に北村灰色さん。実は「池袋駅、午後二時」などの作品が前々から好きで、当初は審査員をして貰えないかなと考えていたのですが、余りそこまで接点が無かったのでどうオファーしようか考えていた所、なんと今回エントリーして下さりました。やはり詩の賞で何度も選ばれているだけあって、テキストの練度は非常に高く引き込まれてしまいました。いつか審査員としてお声がけできたらと考えていますのでお待ち下さい。
次にBlair LyricSさん。自分の辛い部分や弱さに向き合う内容というものはテキストを書いている時も読んでいる時も絶対に辛くなるのは間違いないのですが、それに対してしっかりと向き合い、戦っていく姿勢には非常に感銘を受けました。普段はラッパーとしても活動されているので今後の活躍を大いに期待しております。
…などなど、本当は全員紹介したくてたまらないのですが、長すぎてもアレなのでここで止めておきます。

そして激戦を潜り抜けて見事「果詩合七代目王者」に輝いたのは…第一回から休む事なく皆勤出場を続けてきたPARAさんでした。
PARAさんの一回戦でのパフォーマンスを拝見した際、「あ、これはいつもとは違うぞ」と思いながら、ただならぬオーラを真近で感じていました。今大会からマイクありのルールへと変更されたのですが、それが大きく功を奏した事もあったのか、いつもよりも声自体の魅力がかなり増幅されており、テキストとの親和性もかなり高くなっていると感じました。そしてそのクオリティが落ちる事はなく、その勢いのまま見事優勝を掴み取りました。最早流石としか言いようの無い綺麗な流れでございました。
先程も触れた通り、PARAさんは2023年3月19日に開催された第一回から本戦に唯一皆勤出場し続けている方でした。ただし、毎回強い相手とぶつかる事が多かったため、一回戦で勝ち上がった事が今まで一度も無いという苦い状況が続いておりました。それでもご本人は「一度でも勝てばそれをきっかけにいけると思うんだけどねぇ」と話しながら果敢に挑戦を続けていたのですが、まさか本当にそれを実現させてしまうとは、改めて継続していけば良い事が起きるのだなとしみじみ思いました。
主催という立場上、誰が優勝しても嬉しいのですが、やはりPARAさんに対しては皆勤で出場し続けていた事もあり、優勝が決まった瞬間は特別な感情が込み上げてしまいました…。今日に至るまで辛い状況に陥っていた自分へ暖かい言葉をかけて下さったり、心配して下さった事などが一気に脳内へ駆け巡り、感傷に浸ってしまいました。会場が変わって初めて開催された果詩合にて、共に江古田兎亭で歴史を作り上げて下さったPARAさんが優勝した事については何か運命じみたものを感じました。表彰式の際にPARAさんは気を利かして「本当の優勝者はHARUTA君です。」と仰って下さいました。その瞬間は本当に感無量でございました。

改めてPARAさん、優勝おめでとうございました。

審査員の一人である空廻さんとのツーショット
次に審査員の方々についてですが、恐らく過去の大会と比べてもかなり厳しい視点での審査が終始続いていました。ただし闇雲に厳しい訳ではなく、出場者一人ひとりへ尊敬の念を送る姿勢は決して崩さぬまま、良い所やまだまだな所をはっきりと提示される姿には非常に感銘を受けました。今や素人や一般人でも各種SNSなどで気軽に批評ができる時代だからこそ、「これぞ嘘偽りの無い、血の通った正真正銘の講評だな」と御三方の講評を聞きながら思っておりました。今大会の審査員の特徴としては「純粋に詩人の肩書きのみで活動されている方が1名もいなかった」事が挙げられます(空廻さんはポエトリーと並行してラッパーとしても活動、白川ユウコさんは歌人として活動、MONO_Holy Beggarさんはラッパーとして活動)。これまでの大会においては「自作詩の朗読で競い合う」という名目上、詩人の割合が多かったのですが、「異なるジャンル内で言葉に重きを置く表現をされている方々に審査をして頂き、大会自体の奥行きを広げたい」という思いが徐々に強くなり、今大会はこのような審査員構成となりました。結果としてその方向転換は大成功でした。特に歌人の白川ユウコさんは大会前から独自のチャート票を作成してから大会に臨んでおり、その審査に向けての真摯な姿勢には感服致しました。また「畑違い」の歌人という立場であるからこそ出来るスリリング且つ的確な講評の提供には舌を巻くばかりでした。空廻さんに関しては御三方の中で唯一ポエトリースラムへの出場経験もあり、そこから得た経験や独自の詩への探究心が審査コメントの中でも垣間見えて、聞いている私も大変勉強になりました。MONOさんは二度目の審査員着任となりましたが、一度経験されているからこその難しさも絶対にあったと思います。しかしそのような状況においても自身のスタンスを崩さず、妥協などが一切無い正直な審査を貫いておられました。三者三様で全く異なるタイプの審査員だったからこそ、大会として最高のクオリティを維持できたと感じています。本当に皆様お疲れ様でした。心より感謝申し上げます。

そしてこのような張り詰めた緊張感の中で、前回王者として見事貫禄のゲストライブを務め上げた小径章さんにも感謝申し上げます。王者の名に恥じない堂々たる20分のゲストライブは見ていて終始溜息が漏れました。途中凄すぎて審査員席にいたMONOさんと顔を合わせながら笑ってしまった程です。「凄すぎて笑う」ってこういう事なのだなと改めて思いました。そんな小径さんも今大会を「過去最大のクオリティ」と最大級の賛辞を送ってくれました。その賛辞に恥じないよう今後も果詩合のクオリティを落とさないように精進して参ります。
最後に、イベント全体の反省について少し記載します。果詩合は大会という体裁上どうしてもイベント全体の時間が長丁場となってしまうのですが、今回はその弊害も見えてしまう形となりました。内容は以下の通りです。
・7〜8時間という長丁場のイベント内で終始緊張感が漂い、心休まる暇が余り無かった事。
・会場が地下という事もありって換気がし辛く、息苦しさを訴える方が数名いらっしゃった事。
・椅子に長時間座ってお尻を痛めてしまった方がいた事。
・お食事などを取る機会が殆ど無かった事。
などが挙げられます。特に初めて観覧に来られた方は上記のような状況にかなりとまどわれたのではないかと思います。果詩合という大会は張り詰めた緊張感が持ち味の大会であり、今後もその姿勢はなるべく崩したくは無いのですが、この空気が終始続くと流石に疲労がかなり蓄積されてしまうため、どこか一旦心を休める時間を設けた方が良い(休憩時間を長くする、など)と今回強く思いました。また観覧されるお客様の体力や集中力などを鑑みると、開催時間や出場者の人数なども大幅に変更せざるを得ない部分もあると強く感じました。今回、参加して気分を悪くされてしまった方に対しては深くお詫び申し上げます。次回開催する際は上記内容を課題として改善するよう尽力して参りますので宜しくお願いします。
…とはいえね、全体的に見れば本当に過去最大と言っても良いほど盛り上がりましたし、何より出場者の皆様の「本気」を真近で見れたのが何よりも幸せだったのですよ。ええ。そこは本当に嬉しかったですし、やって悔いは全く無く、現在も清々しい気分でこの文章を打っています。しかし自分は本当に奇妙な人生を歩んでいるなと実感します。何せ普通の人生を歩んでいたら「大会を主催する」というコースには中々ぶち当たらない訳です。そんな奇異な人生コースを気がつけば私はもう歩んで4年目が経過してしまいました。これが一般的に見て幸せな人生かどうかは分かりませんが、年齢性別関係なく色んな人を巻き込んで充実感を与えられる経験って中々ないのでそういった意味ではありがたい人生歩めているなぁとは思います。

大会後の打ち上げの様子。至福の時。

最後の別れ際。この名残惜しさも至福の時。
現時点で来年も開催する予定ではあります。ただし上記の改善点なども踏まえて動く事になると思うので、また内容もガラリと変わる可能性は十分に高いです。それでもまた「果詩合にまた出場したい」「観に行きたい」と行って下さるのであればこれ以上の喜びはございません。その際は何卒宜しくお願いします。
という訳でございまして、もう少し私の我儘にお付き合いして頂けたらと思います。改めて「果詩合其の七」に関わって下さった全ての方々へ多大な感謝を申し上げます。本当に、本当にありがとうございました!!!!

購入した物販の数々。言動さんの詩集と空廻さん作のTシャツ欲しかったので嬉しい。

※出場者名記載者:時猫さん


